坂口修一
黒い犬サマーキャンプ 報告書
2022年8月3日(水) 14:40
さぁ、僕のサマーキャンプの時間です。
みんなにとって「演技する」とはどういうことですか?
それぞれの言葉で説明してください
岸本昌也:入れ物になる
スタートが神楽の舞手なので、メディアの媒介という意識が強い そこに「私」はない
笠井友仁:模倣
そこに創造性を加えたもの 人がやるものである前提
赤星マサノリ:誰かに強制的にやらされるもの
この誰かにの中には自分も含まれる
坂口修一:虚構の中に生きる
インチキの人生
澤田誠:存在する行為
いるということ
想像していた以上に「演技する」ことへの捉え方が違うことが興味深かった。
他の人の話を聞いた上で改めて「演技する」ということを考えながら、
フラットに残り時間で「犬のペスト」を声に出して読みる
それも去年の上演したバージョンでなく、くるみざわさんの最初に書き上げた完成稿を。
2時間近くかかった記憶がある66ページの台本を1ページ1分を切る速度で速読みする試み。
配役を決めずに、前回のリーディング公演と違う配役で、シーンごとに配役が変わっても良いと提案するが、
思考の時間がもったいないと言われ、僕が配役を決めることに。
ト書き:坂口修一
マスター:赤星マサノリ
テン:笠井友仁
チャット:澤田誠
つち:坂口修一
スリル:岸本昌也
ほぼ60分で読み終わる。
発見の多いホン読みだった。
改めて戯曲の力を再認識できたように思う。
今後のサマーキャンプの目標が決まる。
昨年のリーディングで上演した時と、社会が、自分が大きく変わっていることを感じ
た。「感染症」「死」というものをどれだけ切実に、緊迫したものとして伝えることに
やっきになっていた前回と違い、俯瞰して、「感染症」「人間」に振り回される
「犬」たちを笑える作品に出来る気がした。
その「犬」たちを見て笑うことは、もしかしたら、末期の状態なのかもしれないと思
う。現在の最悪の状況に慣れている、諦めている自分がいることに激しく不安を覚え
る。
宿題 明日までに「犬のペスト」の中でひとつ台詞を挙げるとしたらどの台詞?
その理由とともに考えてきて欲しい
2022年8月4日(木) 10:30
宿題の発表から
赤星の順番を決めるアプリで順番を決める。
赤星マサノリ:
ここまでのサマーキャンプを人生を照らし合わせて考える。
楽しいこととか、見つめ直すこととか、発見することとかが、ちょうどここの場で考えることとリンクして面白いな。昨日、「演技する」ことについて考えたのも、まさに「人生」だと思った。
黒い犬の台本を読んだ時に何を言いたいのか、改めて考えると
誰かが何か残したものをどこかに伝えるとか、思ってなくても伝わることとか、伝染病とか、記録とか、自分たちやってた生活とか、
「どこかに何かを伝える」とうのがこの台本で言いたいことだなと思って、何が伝えたいかと考えた
チャットの「俺の言葉は死だ」
確かに、人生生きてて死と向き合ってずっと生きることってそうしないとあかんなと思いつつも、なかなかそうならない。その言葉によってハッと考えさせられる言葉って、それを伝えることによって世の中の考え方が変わったりするかもしれない。
そのことが良いなと思ったけど、伝えるって難しくて、伝えようと思っても、伝わらないし、でも、伝えないと全く伝わらない 。
死について、死を考えろって伝えるの良いなと思いつつ、他に具体的なことでなくて、もうちょっと違う視点から伝えてる言葉ってあるんちゃうかなと探した。
その結果、これが良いなと思った。
最後の方につちがスリルに向かって言うセリフ。
つち「お前のことを想う」
人生において一番、大事なんじゃないかと思った。
正しいとか、正しくないとか分からない。世の中の悪いこと、色々あるけど、人殺しとか、盗みとか、それって自分が悪いここと思ってやってるかもしれんけど、良いことと思ってしか出来へん。人殺しであろうが、100%悪いと思ってやってなくて、良いと思ってやってる。けど世の中的には悪い。自分が良いと思ってやってても、他の人
が迷惑やでと思ったら悪いことになるし、 じゃあ自分はどんなことを世の中にむけてやっていけば良いのか。
どう言うふうに人生を歩んでいけば良いのか。
それが、人のことを思うということをやっていかないと、人のことを想うことで、自分に返ってくるし伝わる伝わらない以上のものが伝わっていくんじゃないかと思って、人生と照らし合わせて、このセリフが凄く良いなぁと思った。誰かのことを思って行動するのが良いのかな。
なおかつ、このセリフは、つちが死を目前にした限られた時間の中、唯一生きてるこのスリルのことを思うと発した台詞であるということ
笠井友仁:
昨日の本読みでテンを読んだのでテンの台詞から探そうとしたが、自分と考え方が違うのでテンからは選べないという結論に。自分の考えに近いところから選びたいなと思ったらチャットのセリフだった。
チャット「俺の言葉は死だ。読んでいる奴を墓穴に落とす。そこにお前が土を掛ける。」
このセリフに注目した。やっぱりこの物語は犬の物語をチャットが書く物語になってて、その物語を人に伝えることによって世の中が変わる兆しをつくれる物語だと思う。この辺かなと思ったが、このセリフを受けたつちのセリフ、これは自分の性格がちょっと出てるかなと思うが。
つち「読まないよ、人間は。都合のいい犬を作ることにしか関心がない。」
このセリフを選ぶことにした。
この物語の背景として、人間の社会が圧倒的に犬の社会より強い、その強い人間から犬がいじめられるというか攻撃される話になっている。
人間が都合の良い犬、この場合の人間と犬というのは、寓意劇になっているので、 犬というのはわたしたち一般の人であって、ここで言う人間というのはもうちょっと違う種類の人間、種類分けちゃいけないと思いますけど分かりやすく言います 。
そうすると今の世の中でも、こう言ったことに感心のない人間もいるし、自分の都合の良い人間をつくることにしか感心のない人間もいることが今の社会の状況をつくっていると思う。だからこのセリフにしました。
岸本昌也:
去年リーディングしたことを思い出した。何が自分に残っているか。
スリルのセリフが残ってる。
場所にいつつも、メッセンジャーとして街へ出掛けていく放浪者みたいなポジションをになっていたし、物語をバトンとして繋いでいく人。
そこでスリルのセリフに注目した。
しかし、この台本の中で一つ選ぶとしたらスリルのキャラクター好きだけど、スリルでない。やっぱりチャット。
チャットがこの物語の根幹に踏み込んでいる。
最初に選ぼうとおもったのは
チャット「分かんないよ、ペストに聞かなきゃ」
テンに「どうしてそんなことになってるんだ?」と聞かれての返答のセリフ。
リーディングでは自分がチャットを演じていたが、その時、このセリフは怒って言ってた。それは、そういうこと分かっていないテンにイライラしてたし、分かってない自分にもイライラしてたし、そのペストに引き起こされた構図ぜんたいにもイライラしていた。三つの中で一番イライラするのは構造、ペストによって引き起こされている構造、例えば現実社会で言うと、規制しなきゃいけない、人に会いにくい、そもそも公演が出来ない、そういうことについてイライラしているからそういう言い方になった。
じゃあ、そのことをうまく表わしてるのはそのセリフじゃないと気づく、逆説的に。
マスターとチャットが喋ってるシーンのこのセリフだと思った。
スリル「ここはあなたの店だろ。怪我して病気の犬がいるの出ていくのか。
それがあなたの言う新しい犬のとる態度か」
新しい犬っていうのがなんなのか?この作品の冒頭でマスターとスリルが喋っている時に、犬の仕草とか、飼い慣らされていた犬が野良犬になって新しい自分の様式を組み立てようとしている犬がいて、その犬たちが生活している街があるんですけど。
犬というのは寓意的になってて、ここでいきなりチャットは犬といいつつ人間のことを話してる。
それがあなたの言う新しい人のとる態度か?
文化的に生きてきて、いろんな社会をつくって街をつくったのに、人間らしさみたいなのを忘れる。怪我をして病気の人がいる人を無視するのが人間らしさなのかどうか、そういうものをどういう状況で手放すのか、どう言う状況で重要視するのか?
みたいなことが、この戯曲の的になっていて、それを人間で描けないから犬になっているところが一番興味がひかれる。
人間という名前とか属性を人間は簡単に捨てることが出来なくて、それを反語的というか、犬にすることではっとする、気づくみたいなことがここでいきなり現れるのが面白い 。
坂口修一:
スリル「誰かが叫ばんといかん、こういう時は」
気になった台詞をいくつかピックアップして、そこから厳選していって、この台本で一番、引っかかったのはこの台詞。現状置かれてる自分の心情なのかな。
死とかペストが怖いものでそれを伝えなきゃとやっきになってた昨年のリーディング。
それが今、改めて読んでみて自分が麻痺してしまってるのか、喜劇に思えてきた。
現在の世の中の状況と照らし合わせて、この戯曲を通して、これが一番伝われば良いなと思った。
澤田誠:
スリル「わかんない。でも読む。読みたいんだ。」
スリルがお調子者で一番、芯をくったことを言っていると思っていて、 それを一番言ってるセリフ。でも読むじゃん皆。
死にたいは生きたいみたいにど真ん中なこと言えるってないよね、なのでこのセリフにした。
あと、最初にお酒の銘柄をただただ言う、意味のないセリフも好き 。
若旦那家康:
※若旦那は昨日、今日と欠席。この課題は事前に LINE にて送ってもらっていた。
テン「撃たれた。この私が。」
改めて読んでみて、コロナももちろんだけど、今となってはカルトな宗教が去年とは違う世相を切っていることになっている。
またテンは教祖という存在ながら、信者に信じさせるというよりも自分が一番信じているという複雑さと、自分が心底信じているもに裏切られる(裏切るも何も人間は信じさせているわけではないのだけども)ことになって、それが理解できてない、心のアンバランスさが面白い。ここから揺らぐわけでもなく、揺るがさないが故に死んでいくスタートの言葉として好きです。
質問「この戯曲の上演でお客さんに何を伝えたいか」
笠井友仁:社会の様子
ダイレクトに伝えられると辛いので、登場人物を「犬」にすることで楽しんで見てもらえる
岸本昌也:現状から逃げることをどう思うのか
寓話として楽しんでもらって、持って返ってもらう
上演している自分たちにもその問いは返ってくる 作品作りを続けるのか、逃げるのか?
坂口修一:感染症に対して麻痺している自分がいる。昨年とは違った距
離感で喜劇として上演したい。
笑ってもらって、笑えている、この現状がめちゃくちゃヤバイのかもということが伝われば
赤星マサノリ:
(僕の話を受けて)怖いな、麻痺してる。
昨年のやってたこと、今から見ると滑稽に思えることもたくさんある。
でも後から現在のことを振り返ってみれば、やっぱりおかしくなっていたと思うのかも。
だから、コロナのことは考えなくても良いのかも
何を残せるのか、残せないのか
伝えるってこと 残っていくことはどういうことなのか考える作品に
→赤星を受けて、笠井さん
戦争の話 おじいちゃんや、おばぁちゃんから聞いたことない 。
時間が経ったら、滑稽にうつること、その時の状況を分かってもらえないと思っているのかも
澤田誠:生き様
それぞれの登場人物の好きな台詞
マスター「触るぞ いいよな」
チャット「うれしいよ。それができて。ここまで来れば俺はもう十分。」
テン「どけ。信者たちが待っている。」
つち「料理も手伝ったことあるな。」
生きることは辛いよね。でも生きてるよね僕たち 。
戯曲の中で引っかかる台詞をみんなで考える
坂口修一:
つち「俺はこの街に土をかぶせたい。穴を掘ってなかに入れる。」
スリル「街を埋めるのか」
つち「そうしたらもう一度かえってくる。犬の街。この店。あの料理。」
を言語化して説明して欲しい。
岸本昌也:
犬を飼ったことがないので、最初のマスターとスリルのやりとりの犬に関する描写がちゃんとわかってるのか分からない。
来週にセリフ覚えてやってもらいたいシーンを8つ伝える
その中から2つ、シーンと配役を言ってもらう
やるシーンと配役が決まる
笠井友仁も役者として参加
2022年8月8日(月)15:00
2022年8月10日(木)13:30
この二日間は
・台詞を覚えてきてもらって立ち稽古
シーンの前後は、そんなに気にしなくて良い 気にしてもらっても良い
「喜劇」を意識してもらって、演じてもらいたい
→「喜劇」とは?
人によって違うと思うので、そのことについて引っかかっても構わない、むしろディスカッションしたい
演出まではしないが、みんなの意見を聞きつつ、この時間のリーダーとして方向性は伝えていく
2022年8月14日(日)10:30
「犬のペスト」の戯曲の中から抜粋した5つの場面を稽古し、最終日にその成果を動画で撮影しました。
これが坂口のサマーキャンプの最終発表です!
出演者
チャット:岸本昌也 つち:坂口修一(代役)
出演者
テン:赤星マサノリ 信者 A:若旦那家康 信者B:澤田誠 信者 C:岸本昌也
出演者
出演者 チャット:澤田誠 マスター(+つち):坂口修一 スリル:若旦那
出演者
マスター:坂口修一 チャット:岸本昌也 テン:若旦那家康 スリル:澤田誠
出演者
つち:澤田誠 スリル:坂口修一
笠井友仁が撮影日にコロナウイルスの濃厚接触者になり、自宅待機となったため参加出来ず、
代わりに坂口が笠井のやるはずの役を演じて撮影した。
笠井の稽古動画もせっかくなので貼っておきます。
出演者
チャット:岸本昌也 つち:笠井友仁
出演者
つち:笠井友仁 チャット:澤田誠 マスター:坂口修一 スリル:若旦那家康